甘く苦い、毒牙に蝕まれて
「は、早く行こうよ!遅刻しちゃう!」
この空気に耐えられなくて、私はそう言って咄嗟に万桜の手を引っ張って急ぎ足で歩いた。
……真守くんの方は一切見ずに。
学校に着いて、慌てて万桜の手を放した。
「勝手に引っ張っちゃって、ごめんね……」
「いいよ。……登校、あの子とするって約束してるの?」
「約束、してるわけじゃないよ」
単に家が隣同士だから。
家を出たら、真守くんがいて。
約束なんかしてないけど、真守くんが毎日私の家の前で待ってるから、だから一緒に登校してるだけ。
「だったら、明日からは俺と一緒に登校しない?」
「え、いいの?」
「うん。まひろと……もっと一緒にいたいから」
万桜は、照れるような事を平気で言ってくる。
もしかして……女の子慣れしてるの、かな?