甘く苦い、毒牙に蝕まれて
苦悩の果てに
トイレに駆け込んで、あいつに触られた箇所を水で洗った。
何度も何度も手で擦った。
髪の毛と制服が濡れても、気にしてる余裕はない。
「何だよ……あいつ……」
顔を上げて、鏡に映った自分の顔を見て何故か笑いが漏れた。
顔色が少し悪い。
確実に泉川のせいだ。
いっそ今日は、早退してしまおうか……。
そんな事を考えながらノロノロ歩いてトイレから出た時、ドンッと肩が誰かにぶつかった。
「ったく……気をつけろよ」
ぶつかった相手は、顔を見なくても声でわかる。