甘く苦い、毒牙に蝕まれて



何で無関係の多崎が口出ししてるんだ?


そもそも、こいつと1対1で会話してること自体がおかしい。




「近藤、あの2人の仲を邪魔するな」


「はぁ!?僕は邪魔なんかっ……」


「まぁ、あんたはそんなつもりないんだろうけど、傍から見ればあんたは上手くいきそうな男女の仲を引き裂こうとする邪魔者でしかないよ」


「偉そうな事を言うなっ!部外者は引っ込んでろ!僕とまひろちゃんはこの10年間ずっと一緒にいたんだっ!一生一緒にいようって約束までした……如月はそれを引き裂こうとしてるんだっ……むしろ邪魔者はあいつじゃんっ!!」


静かな空間に反響する自身の声。

言い終わって数秒後、チャイムの大きな音が僕らの間に流れる。


授業が始まるけど、今はそれを気にしてる場合じゃなかった。



「あのさ近藤、確かに今まではそうだったのかもしれないけど、恋人でもない男女が一生一緒にいるなんて不可能なんじゃない?」


そんな事ない、と思ったが言えない。

多崎の言った事はほぼ正論に近いかもしれない。



「この先、笹川まひろに彼氏ができれば、これからはその彼氏が彼女のそばに寄り添って、彼女の事を守っていくんだ。それに近藤だって、いずれは好きな女性ができて、その人と付き合って、結婚するかもしれない。そうなれば、笹川まひろと交わした“ずっと一緒にいよう”って約束は小さかった頃のただの思い出になって、そのうち完全に忘れてしまうんだよ」



不覚にも、多崎の話に聞き入っていた。

真剣だけど悲しそうな顔。
なんとなく、なんとなくだけど。


こいつはこいつで、いろいろあるのかもしれない。



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