甘く苦い、毒牙に蝕まれて
「でも段々、真守くんの事を鬱陶しいって感じるようになってたの。他に友達も作ろうとせず、いっつも私につきまとってきて、ウンザリだった。いい加減にしてよって思ってたっ……」
僕の顔も見ず、俯き加減で話す彼女は感情的にそう言った。
それをただ、反論もせず静かに聞いた。
本当は言われなくても、薄々は気づいていた事だ。
単に気づかないフリをしてただけ。
見えないフリをして現実から逃げて、一方的に彼女を自分に縛り付けていた。
嫌がらせのつもりじゃなかった。
大好きだから一緒にいたい。
たった、それだけのはずだったのに。
「私ね、このままじゃ、真守くんの事を嫌いになりそうなの……」
そう言ってまひろちゃんは、顔を上げて真っ直ぐ僕を見た。
とても優しい目で僕を見ていた。
薄っすらと涙が浮かんでる。
それでも口元は微かに微笑んでいる。