甘く苦い、毒牙に蝕まれて



嫌だ、と言ってしまいたい。
でもそれを、グッと堪えた。
無言のままカバンから財布を出して、千円札を2枚テーブルの上に置いた。

カバンを持って立ち上がり、



「バイバイ、まひろちゃん」
と言って、店を出た。


「わかった」とか「うん」とは言わなかったけど、さっきのシンプルな言い方で僕の答えは十分伝わっただろう。



今、彼女はどんな顔をしてるだろうか?

気持ちが軽くなって清々した?

それとも、悲しんでる?



いろいろと思う事はあるはずだが、僕は今、1つの事に精一杯でそれどころじゃない。


絶対に泣かない、と決めて、顔に力を入れて涙を無理矢理堪えるのに、今は必死だ。


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