甘く苦い、毒牙に蝕まれて
「読書なんかどうだっていいでしょ?それより近藤くん、誰かに何かされた?あ、もしかして多崎のせい?そのせいで泣いちゃったの?」
無表情で詰め寄ってくる泉川にゾッとして、鳥肌が立つ。
ここを離れようと椅子から立ち上がろうとした時だった。
「おい幸希、いい加減にしろよ。近藤が明らかに嫌がってるのが、わかんねーの?」
「……多崎」
意外にも、助けに現れたのは多崎だった。
無論、僕を助けるつもりだったのかは疑問であるが。
でも今は非常に不覚だが、救世主に見えた。
「邪魔しないでよ多崎。最近、妙に近藤くんに絡んでるけど、何で?俺の妨害をするのが、そんな楽しい?」
「違うっ……俺はただ、嫌がってる相手に絡むのはよくないと思って……」
2人の間を流れるのは、ただならぬ空気。
目の前で喧嘩みたいな空気出すもんだから、気まずくてたまらない。
こういう時、僕はどーするべきだ?
「……多崎って、ほんっとにウザい。偽善者ぶるなよ」
そう吐き捨て、泉川は教室を出て行った。