甘く苦い、毒牙に蝕まれて



残された僕らは、多分お互い、呆然としてた。



「お、おい多崎……大丈夫か?」


少しして、一応声をかけた。
別に多崎が心配なわけじゃない。
でも、無意識のうちに多崎を気遣うような言葉が出ていた。



「……へーきだよ。もう、慣れたから」



気のせいか?

一瞬、多崎が泣きそうな顔をしてたように見えたのは、気のせいなのか……?




「それより近藤、今日は酷い顔だな」


「なっ!」


「あっ、もしかして失恋したとか?まっ、笹川まひろは如月と良い雰囲気だったし、仕方ないよな」


「し、失恋って……別に、そういうわけじゃ……」



おいおい待てよ。

そんな言い方したらまるで……。

僕がまひろちゃんに……。



「あれ、違うの?あんた、笹川まひろに恋してたんじゃないの?」


「こっ、恋っ!?」


「ちょ、そんな驚くなって……俺、お前はあの子に恋愛感情を寄せてるように見えたんだけど……違った?」


「そ、そっか。そっか、そっか。恋、なのか」



指摘されて、初めて気づいたけど。

これまでまひろちゃんに寄せていた感情は、友情じゃなくて、恋だったのか。



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