甘く苦い、毒牙に蝕まれて
そして迎えた昼休み。
「あんたさぁ、今までどこで弁当食べてたわけ?」
「……トイレとか」
「よくそんなとこで食べれるな……」
屋上の前の踊り場で、多崎と向かい合って昼ご飯を食べるのは、非常に変な感じがする。
いろいろ話す、とか言ってたけど。
何を話す気なんだ?
「あのさ近藤……俺があんな自作自演をしたのは、その……なんかあの時は妙にイラついてて……」
「もう、いいよ。その話は終わりでいい」
持ち出してきたのは、予想通りの話。
正直、もういい。
引きずるのも面倒だから、水に流して忘れる方がいい。
「……そうか」
「で?他に話したい事はあんの?」
「幸希の事なんだけど」
泉川か……。
「俺と幸希は、中学の時からの……一応、友達なんだけど……」
「知ってる。泉川から聞いたから。そんでさ、多崎、前に泉川の事をヤバい奴だって言ってたけど、それってどういう意味?」
「大きな声じゃ言えないけど……実はあいつさ……」
多崎は少し身を乗り出して、僕の耳にかろうじて届くくらいの小さな声でこう言った。