甘く苦い、毒牙に蝕まれて
「同性愛者なんだよ……」
それを聞いた瞬間、別に驚きはしなかった。
むしろ、やっぱりなという妙な納得がいった。
僕の反応が予想外だったらしく、多崎は「驚かないのか?」と聞いてきた。
「……別に」
「ふーん、なんか意外だな。お前って、そういうのに偏見持ってそうなのに」
「勝手にそう決めつけるな」
異性ではなく、同性を愛する。
そういう恋愛の形がある事も、一応知ってる。
ただ、気になるのは……。
「多崎は、泉川が同性愛者ってだけで、ヤバい奴だって決めつけるのか?」
「それは……」
気まずそうに、多崎は言葉を詰まらせた。