甘く苦い、毒牙に蝕まれて




初めて見た。


私以外の人と、楽しそうにしてる姿。



なんだかんだで、私がいなくても、新しい友達を作って、楽しくやっているんだ。



突き放したのは私の方。

決別を促したのも私。


きっと、ずっと前からこうなる事を望んでたはずなのに……。




「まーひろ!何見てんの?」


ポンッと頭を叩かれて我に返る。

目の前には紙パックのジュースを飲みながら、悪戯っぽく笑う万桜。




「近藤くんの事、見てたんでしょ?」


そう言いながら、万桜も私と同じように教室を覗き込んだ。

慌てて「違う」と否定したが、万桜はお見通しのようで「寂しいの?」と聞いてきた。



「……違うよ。ただ、変な感じがするだけ」


「変な感じ?」


「真守くんが、私以外の人と楽しそうにしてるなんて……なんか、変な感じなんだ……」



そう、寂しいんじゃない。
単に変な感じがする、それだけ。



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