甘く苦い、毒牙に蝕まれて
【真守side】
ついに迎えた夏休み。
「真守ー、夏休みだからってダラダラしないのっ!ちゃんと宿題やってるの?」
クーラーの効いた自分の部屋でゴロゴロしてたら、掃除機を持った母さんが入ってきて、大声を上げた。
僕は「んー」と曖昧に返事をした。
「自分の宿題は自分でやりなさいよ?まひろちゃんに手伝ってもらおうって思ってるんでしょうけど」
まひろちゃん、という単語に少しだけ動揺した。
……母さんは、まだ知らない。
「そういえば、今年はまひろちゃん、遊びに来ないわね……夏休みはいつもうちに来てたのに」
「あー、忙しいみたい……」
これ以上、その会話は避けたい。
逃げるみたいに、慌てて部屋を出た。
母さん、まひろちゃんはもう、うちに来ないと思うよ?
だって僕らはもう、赤の他人のような関係になったんだから。