甘く苦い、毒牙に蝕まれて




まひろちゃんと一緒に過ごさない夏は、やっぱりどことなく違和感がある。


それでも僕は不思議と、あまり寂しいとは思わない。



何故なら……。




「母さーん、ちょっと出かけてくるから」


「えー、出かけるの?家の掃除手伝ってもらおうと思ったのに」


「……友達の家に、行ってくるから」


「そう。行ってらっしゃい」



今日は、田辺の家に集まる約束をしている。

学校が休みになっても、あいつらとはほぼ毎日顔を合わせている気がする。



僕もそれなりに、毎日を謳歌している。







******



集まったからと言って、特に何かをするわけでもない。



「あーあ、17歳の夏だってのに虚しいなー!たまには女子とも遊びてーなー!」


「まぁまぁ、こうやって4人で集まるのも楽しいからいいじゃん」


「どーせ暇だしな。特に近藤」


「黙れ多崎」



宿題もせず、雑談したり、ゲームしたりするだけ。

そして集まる時はだいたい田辺の家。



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