甘く苦い、毒牙に蝕まれて
「最悪っ……」
さて、どうする?
連絡が取れないんじゃ、合流は難しいかもな。
高校生にもなって迷子になるとか、笑えない。
……そういえば、前にもあったっけな。
確か、小学4年の時。
まひろちゃんと2人で夏祭りに行った時、僕が逸れちゃって迷子になった事が。
でもすぐに、まひろちゃんは僕を見つけてくれた。
少し汗をかいて、息を切らして、僕を見つけた瞬間、「見つけたっ!」って言って抱き着いてきたんだっけな。
今となっては、良い思い出の1つだ。
「……帰るか」
あの時は、まひろちゃんが僕を見つけてくれた。
多分、僕を見つけ出してくれるのは彼女だけだ。
今頃はあいつらも、僕の事は気にせずに祭りを堪能してるかもしれない……。