甘く苦い、毒牙に蝕まれて
些細な変化は、崩壊への一歩
【まひろSide】
夏休みになってから、真守くんの顔を見る事もなくなった。
きっと彼は彼で、日常を謳歌しているだろう。
勝手にそう思うようにしていた。
そして、万桜と2人で訪れたお祭りで、ほんの一瞬だけ真守くんの姿を見た。
声はかけなかった。
友達らしき人達と一緒にいたから。
思った通り、彼はそれなりに夏休みを満喫しているようだ。
「よかったの?」
真守くんに気づかなかったフリをして、黙々と綿菓子を食べる私に、万桜が静かに聞いてきた。
「うん、いいの。きっと私達は、もう関わる事はないだろうから」
「……そう」
万桜はそれ以上追及してくる事はなく、無邪気に笑って「金魚すくいやろうっ!」と言って私の手を引いた。