甘く苦い、毒牙に蝕まれて
私は私で、とても充実した夏休みを過ごしている。
友達と宿題したり、海に行ったり、カフェに行ったり。
時折、万桜と遊びに行く事もある。
楽しい毎日はあっという間に過ぎていく……。
「はぁ……あっつい……」
この日は朝から万桜と図書館で一緒に宿題をやって、今はその帰り道。
夕方になっても、まだまだ日の光は強く、汗が流れるくらい暑い。
家に帰ったら、アイスが食べたいな……。
自宅まで後もう少し、のところで思わぬ人に会った。
「あらっ、まひろちゃんっ!」
「あ……」
「久しぶりね~。元気?」
道端でバッタリと会ったのは、真守くんのお母さん。
買い物に行ってきた帰りなのだろう、両手には近所のスーパーのロゴが入ったビニール袋を持っている。
「は、はい、元気にしてます」
「まひろちゃん、すっかり大人っぽくなったわね~。でも、うちの真守と高校でも仲良くしてくれてるみたいで嬉しいわ」
私達が距離を置いてる事を、知らないんだ。
今でも私達が仲良くしてると思って嬉しそうにしている姿に、少し胸が痛んだ。
「毎日楽しそうに学校行ってるし、夏休みに入ってからもほとんど毎日遊びに行ってるのよ。どうやらまひろちゃんの他にもお友達ができたみたいで」
「は、はい……そうなんですよ」
私はもう、真守くんとは仲良くしてないんです。
……なんて口が裂けても言えない。