甘く苦い、毒牙に蝕まれて
でも結局、勇気を出せないまま新学期が始まって数日が経った。
しばらくの間は万桜との関係はこのままかなと思っていた矢先。
予想外の事が起きてしまった。
「あっ、まひろちゃんだっ!」
「あ……」
休み時間にトイレに行って、手洗い場で鏡を見ていたら、同じクラスの子が入ってきて、親し気に声をかけられた。
「宮原(みやはら)さん……」
宮原律夏(りつか)さん。
栗色のロングの髪の毛を緩く巻いて、肌の色は白くて、目は綺麗な二重に、リップグロスが塗られた唇。
おまけに小柄な身長。
守ってあげたくなるタイプの、とても可愛らしい女の子だ。
「まひろちゃんって、最近ツインテールにしないんだね~」
「あ、うん……」
笑顔で私に声をかけながら、彼女はメイクポーチからリップグロスを取り出して塗り始めた。
クラスは同じだけど彼女とは一度も話した事がない。
だから、親し気に接してくる彼女に戸惑うばかり。
「ポニーテールもいいけど、まひろちゃんには子供っぽいツインテールの方が似合ってたかもなぁ」
それに私は、宮原さんの事がちょっと苦手だったりする。