甘く苦い、毒牙に蝕まれて
あれは2年生に進級したばかりで、真守くんが頻繁に私の教室に来てた頃の事。
『うちのクラスによく来るあの地味男子って、笹川まひろの彼氏なのかなぁ?』
トイレの個室に入っている時に、聞いてしまった。
宮原さんとその友達との会話を……。
『えー、どうなんだろう』
『私は絶対嫌だなぁ、あんな地味な奴。でもま、笹川にはあーいう男子がお似合いでしょ!つーか笹川もさぁ、高校生にもなってツインテールとかないよね~』
この会話を聞いて以来、宮原さんに対して苦手意識を持った私は、あまり彼女とは関わらないようにしていた。
接点もないし、関わる事は恐らくないだろうと思っていたのに。
まさか、向こうから話しかけてくるなんて……。
「私、教室戻るね……」
間が持ちそうになくて、教室に戻ろうとした時、「待って」と何故か呼び止められた。
「まひろちゃんに、聞きたい事があるの」
「何……?」
宮原さんは私の顔をジッと見つめた後、恐る恐るといった感じで話を切り出した。