甘く苦い、毒牙に蝕まれて
「まひろちゃんってさ、付き合ってるの?如月くんと」
「えっ」
ドキリと、心臓が跳ねた。
どうして……。
何でそんな事聞くの?
彼女は黙ったまま、私の返答を待っている。
「付き合って、ないけど……」
そう言った瞬間、彼女の顔がパッと明るくなった。
「そうなんだぁっ!よかった~。2人、妙に仲良いから、てっきり付き合ってるのかなって勘違いしちゃってた」
胸の奥が、ザワザワする。
嫌な予感しかしない。
何で宮原さんがそんな事を言うのか、答えは1つしかない……。
「実は私ね、如月くんが好きなの。もし、まひろちゃんと付き合ってるなら、告白するのダメかなって思ってたんだけど……付き合ってないなら、してもいいよね?」
してもいいよね?って、何?
どうして私に聞くの?
いちいち聞かなくたっていいでしょ?
宮原さんに対する黒い感情が、どんどん支配していく。
「……勝手にすれば」
気づけば、素っ気なくそう言って、逃げるようにその場を離れていた。
普通に考えれば、わかるはずなのに。
万桜がモテないわけがない。
私の他に、彼を好きになる女の子が現れる可能性はゼロじゃない。
モタモタしていたら、彼女ができてしまうかもしれない。
宮原さんに告白されたら、付き合ってしまうかもしれない。
このままじゃ、万桜が取られちゃう……。