甘く苦い、毒牙に蝕まれて
「まひろ、何かあった?」
並んで廊下を歩いてると、万桜が唐突にそう尋ねてきた。
「えっ、どうして?」
「ちょっと、元気ないように見えたから」
「別に何もないよ……」
宮原さんにあんな事を言われて、確かにちょっと落ち込んでたけど……。
私が元気ないってよく気づいたなぁ。
「そっか。何かあったら言えよ?俺、まひろのためなら、どんな事でも力になりたいって思うし」
「……ありがとう」
絶対、宮原さんに奪われたくない。
勇気を出して伝えるって決めたんだから、一歩踏み出さないと。
「ねぇ万桜、ちょっと話したい事があるんだけど……」
万桜は小さく首を傾げて「何?」と言った。
「ここじゃ周りに人がいて言いにくいから、移動しようか」
なるべく人気のない場所がいい。
そう思った私は、「ついて来て」と言い、屋上へと向かった。
でも屋上は立ち入り禁止でカギがかかってるので、入れなかった。
なので屋上の前の踊り場で話す事にした。
「話したい事って何かな?やっぱり、何か悩み事?」
「う、ううん……そうじゃなくて……」
緊張で、手には汗が滲み始めた。
頬は熱く、心臓はさっきからドクドク言ってる。
「あのね、万桜……私……」
「うん」
「私っ……万桜が、好きっ……」
「……え?」
「万桜の事が、好きなのっ……」
あぁ、言っちゃった。
もう引き返せない……。