甘く苦い、毒牙に蝕まれて




「だから、私とっ……つ、付き合ってくださいっ……!」


「……」



もう緊張で、想いを伝えるので精一杯で、万桜の顔が見れなかった。

彼が今、どんな表情をしているかなんて知る由もない。


私の告白に万桜は、何も言わない。



段々、緊張ではなく不安が募り始める。


早く何か言ってほしい。
何でもいいからしゃべってよ。





「まひろ……ごめん、無理だ」


やっとしゃべったと思ったら、それは拒絶の言葉だった。



「……えっ」


「付き合えない、ごめん」


「なっ、何でっ……どうして……」


「俺、まひろの事は大切に思ってる」


「だったら……」


「でもダメなんだ。お前とは絶対に付き合えない」



何よそれ。

どうしてなの?

そんなの矛盾してる。

私が大切なら、「絶対に付き合えない」なんて拒絶する事ないじゃない。



「何でなのっ!?万桜は、私の事が嫌いなのっ!?」


目に涙を浮かべながら、思わず万桜に掴みかかった。

正直私は心のどこかで思ってたんだ。


万桜と両想いになれる。
そんな自信が、少なからずあったんだ。



「まひろっ!お前の事を、嫌いだなんて思った事は一度もない」


感情的な私とは裏腹に万桜は冷静に、両手で私の肩を押して体を引き離した。




「まひろは俺にとって、すごく大事な存在だから」


「だったら付き合ってくれてもいいじゃないっ!言ってる事が矛盾してるよっ……」


「とにかく、お前と恋愛はできない。俺はこれまで通り、友達関係のままでいたいから」



そう言って万桜は私に背を向けて、階段を下りていった。

残された私は崩れ落ちるように座り込み、両手で顔を覆って静かに泣いた。



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