甘く苦い、毒牙に蝕まれて
久しぶりに顔を合わせた真守くんは、なんだか以前とは別人のように思えてしまった。
「まひろっ、待たせてごめんな!」
「あ、万桜」
「……如月」
万桜を見て、真守くんは少しだけ険しい顔をした。
「私、万桜と帰る約束してるから。じゃあね」
そう言って、万桜の手を取って、逃げるようにその場を離れた。
学校を出てすぐに、私は「ごめん」と言って万桜の手をゆっくりと離した。
「もしかして俺、タイミング悪かった?」
「ううん、大丈夫。なんだか居心地が悪かったから……1秒でも早く、あの場から離れたかったの」
「そっか。じゃあ、帰ろうか」
「うん」
並んで歩きながら、私は何気なく、
「そういえば、何で先生から呼び出されたの?」
と聞いた。
すると万桜は一瞬言葉に詰まった後に、こう答えた。
「あー、まぁ、成績の事で……」
明らかに歯切れが悪い。
それに、少しおかしい。
万桜は成績も優秀だから、成績の事で先生に呼び出されるわけない。
「ねぇ、何で嘘つくの?」
多分、何か嘘をついてる。
なんとなくそう思ってしまった。
「まひろって、結構鋭いね」
「……うん」
「呼び出されてたのは、事実だよ。でも、その相手は先生じゃない」
「じゃあ、誰……?」
嫌だな。
その相手が誰か、予想ついちゃった。
「宮原さんだよ。そんなに話した事ないから、急に呼び出されて驚いたよ」
「へぇ。で、何の用だったの?」
「……何でそんな根掘り葉掘り聞くの?」
「だって気になるもん。ね、お願い。教えてよ」