甘く苦い、毒牙に蝕まれて
「私じゃ、ダメなの……?」
万桜の両肩を乱暴に掴み、詰め寄った。
「どうしても私じゃダメ!?万桜って本当は私の事、どう思ってるの?ねぇ、本当の事を言ってよ……」
「……大切だよ」
「……」
「大切な存在だと、本当にそう思ってる」
「私の事、嫌いじゃないんだよね……?」
「嫌いどころか、すごく、好きだよ」
ほら、ね?
絶対そうだ。
確実に私達、両想いじゃん。
「だったら……」
「でもそれは、恋愛感情じゃない。とにかく俺は、まひろと恋人関係になる気は一切ないから」
「そんなっ……」
意味わかんない。
明らかな矛盾だ。
「私の事が好きなら付き合って!」
「まひろっ!」
万桜は両手で、詰め寄る私を軽く突き飛ばした。
「ダメなんだよ……どんなに好きでも、絶対にダメな事もあるんだ」
そう言って万桜は私を置いて、この場を去ってしまった。
残された私は混乱していた。
お願いだから、宮原さんと付き合わないで。
胸の中で強く願った。