甘く苦い、毒牙に蝕まれて


2人の関係がどうなったかなんて、確かめる勇気は、まだない。



「どうした、近藤。弁当の用意しないのか?」


「いや、ちょっと考え事してた……」


「ふぅん。悩み事なら、聞いてやってもいいけど」


「うわ、多崎が優しいとか、なんかキモい。しかも言い方が少し上から目線だな」


「なっ、なんだよ。もう心配して損した」



昼休み。
多崎とそんなやり取りをしながら、カバンからお弁当と水筒を出した。



「そういや田辺、白石はどこ行ったんだ?」


「白石だったら別クラスの友達に、英和辞典を貸してもらいに行ってるよ。5時間目の英語で使うのに、忘れたんだって」


「ドジな奴だな」


「あはは、真守くんってば結構毒舌だねー」



丁度そんな話をしていた時、英和辞典を手にした白石が戻ってきた。



「真守っちー!大変だぞっ!なんかやばい事になってるっぽいぞ!」


妙に慌てた様子で、白石が迫ってきた。

そんな彼を田辺が冷静に「落ち着いて」となだめる。



「俺、今、3組の友達のところに行ってきたんだけど……」


3組って……。
まひろちゃんのクラスだ。



「ほら、真守っちの幼馴染の笹川まひろちゃんっていたじゃん」


「うん……」


「あの子がさ、1人で弁当食べてたんだよ!いわゆる、ぼっち飯ってやつ」


「……それは単に、いつも一緒に食べてる友達が休みなだけじゃ」



何事かと思えば……。

わざわざ騒ぐような事じゃないし。

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