甘く苦い、毒牙に蝕まれて
「それが、そうじゃないんだよ。3組の奴らから聞いたんだけど、今、笹川チャンがクラスで浮いてるみたいでさ……」
「はぁっ!?」
まひろちゃんがクラスで?
絶対に嘘だ。
何かの間違いに決まってる。
いつだって、たくさんの友達がいたまひろちゃんが、クラスで浮いた存在になんて、なるわけがない。
「一体どういう事なんだよ、白石。3組の奴から聞いてきた事、詳しく話せよ」
動揺する僕の代わりに、多崎が白石を促す。
「笹川チャンが、クラスで派手に喧嘩したらしんだよ」
「喧嘩の相手って、誰?」
絶対、その喧嘩の相手に何かされたんだ。
まひろちゃんは、悪くない。
「宮原律夏ちゃんって子」
「……誰だ、それ」
「えっ、真守っち知らないのっ!?すっごい美少女だって有名なのに」
「興味ないから」
「近藤は笹川まひろ以外、眼中にないからな。ちなみに俺も、名前は聞いた事あるけど、顔は知らないな」
「もー!多崎チャンも真守っちも世間知らずなんだからー!」
世間知らずって……。
とにかく、悪いのはその宮原って女だな。
「で、宮原はまひろちゃんに何したんだ?」
「いや、だから、話を聞いた限りじゃ、ほんとに笹川チャンが一方的に掴みかかってたらしくて……ほら、宮原チャンって如月万桜と付き合ってるじゃん?」
「……はぁっ!?」
衝撃的過ぎて、周りも気にせず大声を出してしまった。
信じられない。
如月と、宮原って女が付き合ってるだって?
「あ、ありえない……」