甘く苦い、毒牙に蝕まれて
「なーに迷ってんだよ」
俯く僕にそう声をかけてきたのは、頬杖をついて呆れた顔をした多崎だった。
「気になるんだろ?だったら行ってくれば?3組に」
「……でも、もう一緒にいないって」
「今はそんな事を言ってる場合じゃないだろ?とにかく行ってこい」
「……」
「ここに、連れてくればいいじゃん。いつも男4人で暑苦しいし、たまには女子と一緒に食べるのも、悪くないんじゃないの?」
「暑苦しいって、多崎チャンってば酷いなー!でも、俺もその意見に大賛成っ!」
「僕も賛成。真守くん、すぐに笹川さんを連れておいで」
「あっ、ありがとうっ!」
立ち上がり、駆け足で3組へと向かった。
頻繁に出入りしていた3組へ行くのは、実に久しい。
そっと、教室をのぞいてみると、本当に白石の言う通りだった。
他の人達は友達と机をくっつけたりして、楽しそうに、笑って過ごしているのに、その中でポツンと1人。
まひろちゃんだけが、自分の席に座って、1人で黙々とお弁当を食べていた。
やっぱり、信じられない。
友達と楽しそうにしてたはずのまひろちゃんが、1人になってるなんて……。
まるで、少し前までの自分を見てるみたいだ。
教室内に、如月の姿はない。
深呼吸して、3組の教室へと足を踏み入れた。