甘く苦い、毒牙に蝕まれて
まひろちゃんと別れて、行きたくもない教室へ。
―ガラッ
僕が入った瞬間、一瞬だが静まり返った。
でもすぐに、みんなおしゃべりを再開した。
あの一件以来、完全にクラスで孤立した存在になった。
幽霊的存在のままで十分だったのに。
―ドンッ
「あ、お前いたんだ。存在感ないから気づかなかった」
読書をしてたら、わざと肩にカバンをぶつけられた。
多崎の奴め……。
僕は席を立って、友達と楽しそうにしゃべる多崎のそばに行き、本で多崎の頭を叩いた。