甘く苦い、毒牙に蝕まれて
「止まってよ!」
「っ!!」
腕を引っ張られて、バランスを崩して、そのままそいつの胸板に……。
「俺の名前は、泉川幸希(いずみかわゆき)」
後ろから抱きしめられて。
耳元で、そう言われた。
何、こいつ……。
「触るなっ……」
手を振り払って。
拒絶するように、泉川から離れた。
「俺、ずっとずーっと近藤くんと話したかったんだ」
「……」
「キミってすごいね。見た目は地味で大人しそうなのに、あの多崎と張り合うなんて」
張り合ってないし。