甘く苦い、毒牙に蝕まれて
放課後になって。
ホームルームが終わると同時に、カバンを抱えて走って教室を出た。
下駄箱まで来て、乱れた呼吸を整えた。
今日は1人で帰ろう。
真守くんと、あんまり顔をあわせたくない……。
「まひろちゃん」
後ろから、右手を掴まれた。
声の主はすぐわかった。
「真守くん……」
「教室に迎えに行ったら、いなかったから……慌ててここまで走ってきたんだ。一緒に帰ろう」
お昼休みにあんな事を言ったにも関わらず、真守くんは普段通りだ。
まるで、なかった事にされてるみたいに。