甘く苦い、毒牙に蝕まれて
沈黙が破られ。
彼は私の右手に、そっと自分の手を重ねた。
「今の状態を、変えたいんでしょ?」
「……」
「不安になる要素が、どこにあるわけ?」
いつの間にか彼の視線は、また私をしっかり捉えていた。
「苦しくなったら、またいつでも連れ出してあげるから」
「如月くん……」
やっぱりあなたは救世主だ。
本当に、ありがとう。
私が小さく笑ったら、彼も笑った。
彼とのこんな時間がずっと続いたらいいのになって、心の中で秘かにそう思ってしまった。