正義の味方に愛された魔女3
「じゃ坊主、名前、年齢、住所、電話番号、職業、
それと親の名前をここに書け」
龍二は卓上メモ用紙を突きだした。
従わざるを得ない雰囲気を感じ取ったのか、素直に書き始めた。
私たちが聞いても何も答えてくれなかったのに…。
『山上颯斗(やまがみはやと)19歳。
C市○○○○‐○○‐○○‐○○○。
電話…○○○○○○○○○○
無職。
父、山上聡一郎。母、山上恵子」
はやと、か。
「俺と同じ読みの名前かよ!何か腹立つ。
山上さんってさぁ、母さん…」
「そうだね、住所もこの辺だし、あのおうちだねぇ」
ご近所さんです。
「なぁ、やまがみはやと、お前さ、もしかしてC北高出身?
それで、就職も進学もしてないのか?」
「……そこ、中退。二年からずっと…家とこの辺から出てない……」
「それで引きこもってネットばっかりやって、口コミサイトに中傷とか書きこんで遊んでたりするんだよな?」
隼人、悪魔の誘導尋問ですかい?
「なっ……なんでそのこと…」
「だいたい、そんなもんだろ?」
「僕はただ、この店員さんのことを調べてただけ…。
たまに、この辺の洋食屋でお昼食べてるよね?
僕と目が合ったこともあるし、笑いかけてくれたよね?
名前が知りたくて…でもネットには店長の名前しか載ってなくて…。
でもこの前、ここの前を通った時、あの店員さんが僕の名前を呼んでたんだ。
僕のこと、素敵だって。カッコいイイって。
僕も前から見てて知ってるよって思って、目立つように書き込んだ」
【「『(はぁ…………)』」】
意を決したように沙耶ちゃんが話し出した。