それでも君が
「凄いなー。俺まず結婚が現実的じゃないから想像もつかないわ」
「今は晩婚なんて言われてますもんね」


初対面なのに会話も途切れず、なかなか心地よい。
当たりの部下が入ってきたようだ。
そうこう話をしてるうちに、働いている部署についた。
一番奥の、少し薄汚れたクリーム色の機械の前で止まる。


「あ、この機械が相川さんに担当してもらう機械ね 」
「これですか。よろしくね、1号機」


相川さんが機械の中を覗けるようになってるガラス窓をすりすりと撫でる。
撫でる指は、見慣れて女の子の手と違って傷だらけだった。
指の付け根は裂け目がたくさんで、血が滲んでいる。


「相川さん、手…」
「あー、私肌弱くてすぐに皮めくれたり切れちゃうんですよー」
「そーなんだ…」


あまりにも女の子の手と離れてて、あまり触れて欲しくないかもしれないのについ口から出てしまった。
きっと元カノだったら、デリカシーが無いと言って一日不機嫌になっていただろう。
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