マネージャー日誌 ─青春の欠片

──カァン!



──オーライオーライ



─ナイシュート!



放課後かえでは教室からグラウンドを眺めた。

野球部サッカー部ハンドボール部エトセトラ、エトセトラ。

日に焼けた生徒が広いグラウンドが狭く見えるほど駆け回っている。

かえではその様子をぼーっと眺めていた。

……何部に入ろうかな。



神奈川県立森坂高校に入学して2週間、もう2日後には入部届けを提出しなくてはならない。

かえではどこに入るか、決めあぐねていた。

中学では吹奏楽部に所属していたかえでは、はじめ森坂高吹奏楽部の見学に行った。

かえでの所属していた吹奏楽部はコンクールで東関東大会で銅賞を取る中堅校だった。

当然練習はきびしかったので、生活のすべてを音楽に捧げたようなものだったし、辛いことももちろん多かったが、そこまで熱中することに何処か快感のようなものを覚えていた。

高校で、吹奏楽の県内強豪を選ばなかったのは、どの高校も先輩が厳しい、3年間やってもコンクールに出られるか分からない、

という噂をよく聞いたからだ。

森坂吹奏楽部はかつて東関東大会に出たこともあるが、今はダメ金、もしくは銀賞という結果を残す程弱くなっていた。

練習も程々レベルだと聞いていたし、あこがれの電車通学も出来る森坂高校はかえでにとって、条件ぴったりの高校だった。



かえでは部活見学初日、吹奏楽部をみて落胆した。

程々レベルの練習ではない。パートごとに分かれて教室にいる部員たちのなかで楽器を吹いていない者がほとんどだった。

もはや楽器を出していない者すらいる。


……こんなレベルの部活なの?練習は?

口から零れ出そうな言葉をかえでは必死に抑えた。

こんな部活に入るのは嫌だ。

かえではそう思ったが、運動経験のない自分に、今更運動部に入る気もしなかった。










< 14 / 17 >

この作品をシェア

pagetop