恋愛は蜜より甘く、チョコより苦い。
いつもよりも回転の早い足がもつれる。
ばたばたと廊下に足音が響く。
強制的に引かれる先には河野が薄く汗をかいていた。


「ねぇ!ちょっと」

大きな声を出しているはずなのに、
彼は一向にこちらを振り向くことをせず
ひたすらに走る。

なんでこんなことに…


いつの間にか、裏庭まできていた。
足を止めた河野と陽菜の息づかいは
リズム感を失い、行き来を繰り返していた。
掴まれた腕は、いつの間にか離れている。

「も、なんなのアンタ…こっちがいい加減にしてって感じなんだけど…」

呼吸を整えながらの、精一杯の反撃。
河野は陽菜を見つめながら汗を袖で拭う。

「お前さ、なんで俺のこと避けてんの?」


胸がドキリとなる。

「えっ、と…そんなこと」

「あるだろ」

ずいっと顔がよる。
咄嗟に目をそらした。
自分が今どんな顔をしないるのか
わからないけど、とにかく顔が熱い。


「陽菜、俺のこと意識してくれてんの?」

心臓がとにかくうるさい。
このままでは河野に聞こえるんじゃないか
と思うほど。
だらだらと汗がすごい。


「そんなわけないじゃん!」

何言ってんの?!!
私は、私は…!!



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