課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜
昼休みが終わり、仕事に戻る前に、トイレで化粧を直していると、いきなり耳許で声がした。
「……なにも誤魔化せてないわよ」
ひいっ、地縛霊っ?
と振り返ると、礼子が立っていた。
「へー、課長と行ったんだ? 松山」
いつの間に? と言う。
うわーっ。
こんなところでっ、と辺りを見回したが、幸い、もうみんな職場に戻っているようで、他に人は居なかった。
「ち、違うわよ」
「そのように聞こえたけど?」
「気のせいよ。
なんで私が課長と出かけなくちゃいけないのよっ」
「まあ、なんでだかしんないけど。
あんたたち、話が合うみたいじゃない?」
ぎくりとする。
「この間のカラオケのときだってさ。
私がトイレ行くときも、戻ってくるときも、あんた、ずっと廊下で課長としゃべってたじゃない。
なにやら楽しそうに」
「礼ちゃん、見てたのっ?」