課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜




「なんだー。
 お前、真湖りんと旅行に行ったの?」

 エレベーターが混んでいたので、階段で下りていたとき、花田が言った。

 呼ぶな、真湖りん、と思いながら、横目に見る。

「えーっ。
 いいなあ。

 いいよね、真湖りん」

「なにもよくない。
 ただ、こうるさいだけだ。

 それから、真……沢田を連れてなんか行ってない」

「旅行には行ったんだ? 何処に?」
と花田が笑う。

 ああ、しまった。
 うっかりだ。

 こんな失態は滅多にないのに、なにか自分は動揺しているのだろうか。

 そんなことを考えている間に、花田が言った。

「そうか、そうか。
 きっと、お前は、たまたま真湖りんと同じ場所に行ったんだな。

 そしたら、宿もたまたま真湖りんと一緒で、行く先々に真湖りんが居たと」

 それじゃ、沢田がストーカーだろ。
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