課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜
「で、ベッドも一緒だったと」
「それは違うっ」
と言って、それ以外のことは認めてしまう。

「いいなあ。
 なんか奢れよ」

「だから、行ってないって」

「土産、今度は買ってこいよー」

 人の話を聞けっ、と振り向いたが、花田はもう自分のフロアに行ってしまっていた。

 まあ、ああいうマイペースな奴だから、気が合うのだろうが、と息をつく。

 本当に失態続きだ。
 沢田が絡むと。

 そういえば、あの莫迦、反省会をやりたいとか言っていたが。

 あのときもまだ、酔いが残っていたのかもしれないし。
 覚えてないかも。

 ……でも、そういえば、まだ杯を渡してないが。

 などと思っていると、下の階に居た真湖が周囲を確認したあとで、小走りにやってきた。

「課長っ」
「俺の周りをウロウロするなっ」

 今の失態のあとなので、反射的に怒鳴ってしまう。

 だが、それでしょげるような真湖でもない。

 わかってますよう〜と拗ねたように言ったあとで、まったくわかっていないかのように、しゃべり出す。

「でも、ちょっとすみませんっ。
 あのっ、さっきので、礼ちゃんにバレちゃいました」

 このボケがっ、と思ったが、
「……しゃべらないように言えよ」
と低い声で答える。
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