課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜
「沢田。
……沢田っ!」
「は?
ああ、はいっ」
と雅喜に呼ばれていたことに気づき、立ち上がる。
雅喜はひとつ溜息をつき、ボールペンの背で、真湖の後ろを指差した。
「ああっ。
監査役っ」
人の良いおじいちゃんという印象の監査役が、何故か自分でコピーを取ろうとしている。
「私がやりますっ」
「ああ、いや、いいんだよ。
二、三枚だけだから、自分でやろうかと思って」
「いえっ。
わたくしがっ」
と言ったのだが、一枚目で、トナーがなくなってしまった。
何故か、側に置いてあるはずの予備のトナーがない。
それに気づいた雅喜が真湖を見据えて言う。
「沢田、今すぐ取って来い。
二分以内だ」
ええっ!?
トナー、地下なんですけどっ。
「……早く行け」
とあの眼光鋭い目で脅され、はいっ、と走って行った。