課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜
「おじさんとおばさんは?」
と訊くと、両親は渋い顔をする。

「まだ仕事を抜けれてないんだ。
 真湖たちまで抜けてきてくれたのにな」

 おばあちゃんと同居していたのは、長男のおじさん夫婦の方だった。

「仕方ないよ。
 私たち探してくるから。

 それに、おばさんたちはあっちに居た方がいいかも。

 意外とすごい移動して、元住んでたところまで帰ってるかもしれないし」

 今、愚痴とか聞きたくなくて、そう言い、真湖は雅喜とともに、そこを離れた。

「……いろいろ複雑そうだな」
と細い住宅街の道を歩きながら雅喜が言う。

「うーん。
 まあ、いろいろ。
 何処のうちにでもあるようなことですけどね」

 雅喜は、周囲を見ながら、
「自宅から離れた場所にあるんだよな、この施設。
 似た建物を探しているかもしれないぞ」
と言う。

「似た建物?
 家とか?」

「家とかよく行っていた場所とか」

 わかりました、と言いながら、二人で老人の行けそうな範囲を歩いて回る。

 住宅街なんて、何処の町も似たようなものだ。

 ぽつりぽつりといきなり古い喫茶店があったりするところも。

 こんな見知らぬ町で、本当に人ひとり探せるのだろうかと不安になる。
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