課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜
 雅喜も少し心配そうな顔をしていた。

「膝とかは悪いかもしれないが、昔の人はよく歩いていたから、意外と健脚だったりするしな」

 思ったより移動しているかもしれないと言う。

 日も少し暮れてきた。
 近くに山もある。

 あちらに行ってなければいいのだが、と夕暮れに染まってきた町から山の方角を見る。

「おばあちゃんの家、裏に山があったんですよね」

「まあ、入り込んだとしても、今は冬じゃないから」

 今夜中に発見できなかったことを考えてか、そんなことを言ってくる。

「そうですね……」
と言いながら、商店街を抜け、山に向かって歩いていると、それが見えた。

 小さな教会だ。

 いつか来た気がする、と思ったが、この辺りを歩いたことはない。

 雅喜を振り向き、言おうとして、気がついた。

「道後温泉……」

 え? と前を見ていた雅喜が振り向く。
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