課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜
「昔、おばあちゃんと道後温泉に行った、行きか帰りに、何処かへ立ち寄ったんですよ。
 そのとき、近くにこんな感じの小さな教会があって」

 確か、おばあちゃんが、牧師さんと教会に植えてあった花を見て話し出して、そのまま、牧師さんと教会の中で話したんだった。

 小さな教会だったけど、古いステンドグラスがはまっていて、そこから差し込む虹色の日差しがとても綺麗だった。

 真湖はその教会に足を踏み入れた。

 引っ張ってみると、扉は開いたが、辺りに牧師の姿は見えない。

 勝手に入ってもいいものだろうか、と思いながら、
「すみません……」
と、中に踏み込んだとき、それは見えた。

 祭壇の右前辺りの古い木のベンチから覗く白い頭。

 おばあちゃんは、家に居たときは長い髪をひとつにまとめていたのだが、施設に入ってからは、洗いやすいようにか、短く刈られていた。

 だから、すぐにわかった。

 ほっとしながら、真湖はそっと近づいていく。

 ことんことん、と木の床を踏む靴音がした。

 おばあちゃんは、ぼんやりステンドグラスから降りそそぐ夕暮れの光を見ていた。

「おばあちゃん」
と声をかけると、こちらを振り向いて笑う。

「あら、こんにちは」
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