課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜
雅喜の家に帰り、
「では、課長。
おやすみなさいー」
と酔ったままいい気分で、真湖が部屋に入ろうとすると、
「待て」
と猫の子のように首根っこを押さえられる。
「頑張るんじゃなかったのか」
「いっ、今じゃないです~っ」
と真湖はすっかりおのれの部屋と化している部屋の戸口にしがみつく。
昨日からの騒動で、今日は疲れてるんですよっ、と思っていた。
「課長、元気ですねっ」
と文句を言う。
「だいたい、こういうことは結婚してからでないと……」
と今更なことを言い出すと、ほら、と雅喜は婚姻届とペンを出してきた。
もう保証人のサインまで入っている。
監査役と専務だ。
「さあ、今すぐサインしろ」
「なんか……悪徳商法に引っかかった気分です」
「たらふく寿司食って、酒呑んで、牡蠣食って、なにが悪徳商法だ」
ほら、早く書け、とペンを握らされる。
人生と子供まで売り渡す羽目になるとは、めちゃくちゃ高くつく寿司だなあ、と思いながらも、サインした。