課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜
結婚してみましょうか?
翌週、雅喜は会社の階段のところで、男二人がいさかっている声を聞いた。
「だから、真湖りんと相性がいいのは俺の方だって」
「僕の方がさっとお姫様抱っこできると思うが」
……なにで、もめてるんだ、お前らは、と雅喜はそこを覗く。
「お前が手を引けばいいんだろ」
「なに言ってんだ、絢子の次は、沢田さんか。
お前が手を引け」
「真湖りんはお前の彼女じゃないだろっ?」
雅喜は腕を組んで二人に言った。
「……お前ら、二人とも手をひけ」
こいつら、まだ俺を差し置いて、もめてたのか……。
それぞれの額に貼りつけるように、封筒を押しつけた。
二人とも反射神経がいいので、それが額から落ちる前に、受け止める。
「式の招待状だ」
ええっ? と二人は息ぴったりに声を上げた。
「今週末だ」
「ええっ!?」
雅喜は行きかけて振り返ると、
「絶対来いよ。課長命令だ」
真湖がいつも、凍りつく、と文句を言う瞳で二人を見て、その場を去った。
二人とも、真っ白な招待状を手にしたまま、ぼんやりと立ち尽くしているようだった。