恋を紡ぐ
苦しかった。楽になりたかった。


こんな気持ち知りたくなかった。


忘れようとひたすら机にかじりついた。恵と話している以外はただ机の上の教科書や参考書とノートを見ていた。


その間だけは何も考えなくて済んだ。特に数学と向き合っている時は苦しめられる鎖から解放された気分で幸せすら感じた。


でも、ふとした瞬間に後ろを見るとやはり息苦しくなった。


授業中プリントを後ろに回すときは意識して後ろに向かないようにしたし、自分でも気付かないうちに後ろに意識がいってしまうときは数学の教科書を開いて無理やり意識を数学に向けた。


それでも気付けば平坂くんを見てしまう自分がいた。だめだと自分に言い聞かせることが意識してしまっている証拠なのだと恵に言われなくてもわかっていた。


私は、平坂くんのことを、こんなに考えている。


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