恋するサクラ
 お母さんは案の定「そろそろ結婚とかどうなの」的な話を振ってくる。

「付き合ってる人いるから」

 とかいうと、根掘り葉掘り聞いてくるし。

 まだ、何も言うまい。


 
 その日の夜、恭吾さんとラインした。

『家で森野の話したんだ。イラストも見せたし』

          『え?そうなの?』

『ダメだった?』

          『だめじゃないけど』

『うちの母ちゃん喜んでたよ』

          『え?そうなんだ』

『嫁に来たらサクラサクラだって!受験の神さまみたいだねって』

          『そ、そう』

『次はぜひ顔が見たいって』

          『そうだね』

 受験の神さまって……

 絶対心の中で大爆笑なんじゃないのーそれ!

 なんでこの人こういうこと平気で言うんだろ。

 私の気も知らないで。

 ていうか、恭吾さんが結婚をほのめかすとき、私が避けているのばれてる感じがする。

 いっそ、恭吾さんが森野恭吾になってくれればいいのに、「佐倉」って名字をこよなく愛する恭吾さんに、口が裂けても言えない。

 ほんとにもう!

 バルコニーで、あなたはなんで佐倉なのーって叫んじゃうよ!
< 27 / 35 >

この作品をシェア

pagetop