好きって伝えさせて
8章 伝える想い
ガラガラ
「っはぁっはぁ」
運動音痴なのに、4階まで駈け上がるんじゃなかった…。
「先輩?どうしたんですか、そんなに急いで。まだ、部活開始15分前ですよ?」
そこには、鈴菜が立っていた。
昨日、あんなことがあったはずなのに、優しく話しかけてくれる鈴菜は僕より幾つか大人に見えた。
「あぁ…鈴菜、ちょっと、来て」
と、鈴菜の腕をつかもうとする。
パシッ
誰かに手を叩かれた。
驚いて顔をあげると、
そこには鈴菜の幼馴染み、蓮大がいた。
「先輩、鈴菜にこれ以上構わないでください。」
「あぁ、君じゃなくて鈴菜に用だから。」
「なら、俺も付いていきます。」
「ご自由に。」
そういって鈴菜…と、蓮大を連れて音楽室横の音楽準備室に入った。
吹奏楽部員が会議などでよく使う教室で、『使用中』の札を下げれば、誰も入ってくることはない。