好きって伝えさせて
8章 伝える想い



ガラガラ

「っはぁっはぁ」


運動音痴なのに、4階まで駈け上がるんじゃなかった…。


「先輩?どうしたんですか、そんなに急いで。まだ、部活開始15分前ですよ?」


そこには、鈴菜が立っていた。

昨日、あんなことがあったはずなのに、優しく話しかけてくれる鈴菜は僕より幾つか大人に見えた。


「あぁ…鈴菜、ちょっと、来て」


と、鈴菜の腕をつかもうとする。

パシッ

誰かに手を叩かれた。
驚いて顔をあげると、


そこには鈴菜の幼馴染み、蓮大がいた。


「先輩、鈴菜にこれ以上構わないでください。」


「あぁ、君じゃなくて鈴菜に用だから。」


「なら、俺も付いていきます。」


「ご自由に。」

そういって鈴菜…と、蓮大を連れて音楽室横の音楽準備室に入った。


吹奏楽部員が会議などでよく使う教室で、『使用中』の札を下げれば、誰も入ってくることはない。

< 30 / 42 >

この作品をシェア

pagetop