好きは1日3回まで
あたしが席に着くと
前の席の北見くんが
「また借りたの?」
なんて言ってきた。
「べっつにー」
「なんだよその顔は」
「ふふ、羨ましいでしょー?」
「全く」
北見くんは頭が良さそうな顔をしている人。
その通りなんだけども。
だからバカなあたしにいつも勉強を教えてくれる。
頭も良いがモテモテ。
先生達からの評判もいい。
何たるヤツめ。
そんなあたしとはこの席替えで仲良くなったという事。
「数学嫌いきらーい」
「てか。逆に好きな教科あるの?」
「なによー」
「別に?」
「特に数学は嫌いなのー」
「ふーん。でもいいじゃん」
「え?」
「それ、彼氏の教科書なんでしょ?頑張れるじゃん」
「ほ...」
そうだよね。
りょうくんの生暖かい教科書。
頑張れる。
今までいっぱい借りてきたけどその度に沢山メッセージを残してきた。
りょうくん見てるのか分かんないけど。
見てないのもありそうだけどさー
今日もメッセージ書いちゃお。
まあ勿論、メッセージの返事は無いんですけどね。
あるわけないか。
「北見くん、なんでここに-3が入るの?」
授業中、分からないことだらけ。
バカなあたしに最後まで教えてくれる北見くんに感謝。
「ここを-1にしたいから、今2が入ってるだろ?-3して-1になるから」
「え、なんで-1にしたいの?」
「(X-1)(X+1)の答えは-1だから」
「なるほどー、分かりやすい」
「まあな?」
「北見くんナルシだから嫌だけど」
「死ね」
あ、ナルシは否定しないのね。
あー、
はやくりょうくんに会いたいなぁ。
なんて。
授業早く終われー
って魔法を掛けましたとさ。