俺様富豪と甘く危険な恋 ハネムーン編
「あ、つい……ごめんなさい。英語の方が慣れているから。わかりました！　栞南さんのために日本語にします！」


あからさまに栞南は英語が不得意だと言われているようだった。もちろん本当のことなのだが。


「栞南、これを食べろよ。うまいぞ」


蓮は先ほどまで切り分けていたサーロインを差し出して、栞南に食べさせようとする。


「う、うん」


良い色に焼けた肉を刺したフォークを差し出され、栞南はパクッと口にする。


「おいしい。ハワイのマーケットにこんなおいしいお肉が売っているんですね」


ちょうどビールを給仕に来たダニエルに栞南は言ってみる。


「スーパーにこれほどの肉は置いていませんよ。取り寄せたんです」

「そうだったんですね」


（そんなに上等な高いものじゃなくてもいいのに……。蓮と話さなきゃ）


自分のためにいつもより奮発してくれているのならしなくていいと栞南は思ったのだ。だが、香港の滞在を思い出すといつも最高級のものを食べていた。今日の肉も彼らにとって特別なものではないのかもしれない。


「どうした？」


考えることに夢中で、食べる手が止まってしまった栞南の顔をのぞきこむ蓮だ。

< 18 / 65 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop