ただよう、甘いヒト【完】
「安城飲み過ぎ」
こうしてあたしの部屋でお酒を飲むことも初めてだった。いつもは大抵外で飲んできて、ここでは一滴も飲まなかったのに。
ひょいと安城からビール缶を取り上げて、それをあたしが一気に飲み干す。
「わーお、織ちゃんいい飲みっぷり」
「うるさい」
クスクス笑って喜ぶ安城の腕を軽く叩けば、その腕にまんまと捕まって膝の上に乗せられてしまった。
後ろからぎゅっと抱きしめてくる安城から酒の匂いを嗅ぎとりながら、ぐりんと首を回して安城の顔を見る。
ヘラヘラ笑っている安城は、あたしの肩の上に自分の顎を乗せて、首筋を舐めてきたから一瞬ビビった。
変な声が出そうになるのをなんとか抑えて逃れようとしたけれど、それ以上そいつは何もする気がないのか、またクスクス声を立てて笑う。
「……なに?」
「……織ちゃんて美味しそうだなって思って」
「……美味しかった?」
「フツー」
はいはいフツーかよ。なんだそりゃ。
思わず笑ってしまえば、安城のあたしを抱きしめる腕に力がこもった。相当酔っ払ってやがる。