ただよう、甘いヒト【完】
「……どこで飲んでたの?」
「んっとねー、駅前の居酒屋ー」
「ああ、新しく出来たところ?」
「とー」
「……と?」
「兵実とーはなばたけとー……ん、あと……でんすけ」
「何時から飲んでたのそれ……」
次々挙げられる街の居酒屋の名前に顔を引きつらせるも、安城は答えることなくケタケタ笑ってあたしの枕に顔を埋めた。
今日は土曜だ。まさか昼間っから飲んでたわけじゃないよね? まさかまさか。
彼の本業は学生だ。確か。間違いない。私と同じ、大学3年生。飲んだくれじゃなくて。
「ていうかそこあたしのベッドだから。もう寝るからほんとどいて……!」
「えー」
「えーじゃない」
渾身の力を込めて安城をどかそうとするも、逆に手首を引っ張られて態勢を崩し、安城の腕の中に抱かれてしまった。