ただよう、甘いヒト【完】
朝起きるとあたしの腕の中に安城はいなかった。
がっかりするよりも早くに、すぐ近くでテレビの音が聞こえてきて体を起こす。
あたしに背を向けてそのテレビに夢中になっている安城の姿を見つけて、無意識にホッとしてしまった。
「……安城」
「……あ、織ちゃん起きた。超寝坊じゃん。だらしな」
「……」
深夜にあんたが起こしてきたからじゃないか。
と若干不機嫌になりつつも、すぐそばの目覚まし時計はもうすぐ11時を回ろうとしていたから、安城のことを差し引いてもあたしが寝すぎたことには変わりがないなとぼんやり考えた。
「……何見てるの?」
「アニメ」
「……こんな時間にアニメなんかやってたっけ」
「録画だよ。この前来た時録っといたやつ」
何を勝手に。全然気付かなかった。